この映画は、人生の複雑さと面白さをスタンダップコメディの舞台で描いた、まさに『生きてる』と実感できる作品です。監督はブラッドリー・クーパー、離婚危機の夫婦の物語を、実話を基に、上質なヒューマンドラマに仕上げています。
まず、この映画の魅力は、実話に基づいているという点です。主人公のアレックスが偶然コメディクラブの舞台に立ち、妻への本音をぶちまけるという、あり得ないような展開が、実話だというのですから驚きです。しかも、その実話の持ち主が、イギリスの有名コメディアン、ジョン・ビショップというから、説得力が増します。人生は時に、映画やフィクションをも超える面白さに満ちているのです。
さらに、この映画は、ブラッドリー・クーパーの多才さが光ります。俳優として一流なのはもちろん、監督としても『アリー/スター誕生』や『マエストロ』で高い評価を得ています。本作では監督・脚本だけでなく、撮影監督や出演もこなすという、まさに超人ぶりを発揮しています。
そして、この映画のもう一つの魅力は、スタンダップコメディの舞台がもたらす臨場感です。登場人物は多くありませんが、アレックスが何度も立つコメディクラブの親密な空気感や、別居中の彼の小さなアパートの狭さなど、リアルな空間を巧みに表現しています。そこに、本能に訴えかける音楽や音響効果が加わり、観客はまるでその場にいるような感覚を味わえます。
この映画は、大作ならではのスケール感と本物感を持ちながら、同時に、個人の人生に寄り添うような感傷と切実さも兼ね備えています。まさに、映画ファンが求めていた『令和の大作×上質ミニシアターのハイブリッド作』と言えるでしょう。
また、この映画は、夫婦や恋人との関係性について、深い洞察を提供してくれます。アレックスとテスの口喧嘩の中で、テスが「一緒に不幸になりたかった」と吐露するシーンは、人と生きる難しさと美しさを象徴しています。人は時に、自分と他人の幸せが相反する複雑な状況に直面します。この映画は、そんな人生の『すさまじさと素晴らしさ』を、ユーモアと共感をもって描き出しています。
さらに、この映画は、人生の選択肢の多様性を肯定してくれます。白と黒の単純な二元論ではなく、自分たちで選択肢を生み出し、人生を彩っていくことが、結婚や恋愛の醍醐味だと教えてくれます。
個人的に、この映画は『人生に浸る』という表現がぴったりだと感じました。登場人物の人生に深く共感し、笑い、涙し、怒り、恋をする。そんな映画体験は、劇場でこそ味わえる至福の時間です。
最後に、この映画のタイトル『これって生きてる?』は、観る前と観た後で印象が変わる、秀逸なタイトルです。観る前は、人生の複雑さを問いかけるように感じ、観た後は、その複雑さこそが『生きてる』ことの証だと実感します。
この映画は、人生の面白さと奥深さを、スタンダップコメディという舞台を通して見事に表現した、必見の一作です。劇場で『生きてる』ことを実感してみませんか?